カブレ

イギリスという国は好き。高校のとき映画「Another Country」でこの国の空気に魅せられて、大学ではじめてこの土地を踏んで。初めて行った土地で「初めてという気がしない」と感じたのはこの国が最初でした。別に「わたしは前世ここで生まれたー!」とかそういう強烈な気持ちではないのだけれど、空気がすんなり自分に溶けるのを感じたのです。
イギリスという国がそういう国なのかもしれない。これまでの歴史の中で様々な民族が、入っては出ていった土地。だから、土地が人を受け入れることに慣れているのかもしれない。日本人だからと言って好奇の目で見られることも少なく、かと言って無視されるでもない。(もちろん田舎に行けばあります。)明らかに西洋の風貌の人が、明らかに東洋の風貌であるわたしに道を訪ねてくるような土地。イギリスは面白い国です。

かと言って、カブレるのはどうかなぁと、わたしは思います。憧れるもよし。部分批判、部分賛美もよし。でも、「なんでもイギリスはよくって日本はだめ〜」の類いの本が書店に並んでいるのには閉口します。長い年月をかけてそれぞれの民族がつくりあげてきてる「国」というものに、そう簡単に優劣をつけられるとは思えない。そう言った意味で、今やイギリスエッセイ界の大御所、林望の3冊目以降は(わたしにって)NGです。

バランス。中立。公平。イギリスの体質を表わすとそんな言葉になるのかなと思います。民族、階級、年齢、性別、いろんな人種がそれぞれ自分の思う方向にベクトルを向けていて、結果的にそれが真ん中辺りでうまい具合にバランスを保っている。保っているだけに、新しい方向に進もうとするとき、腰が重くなりがちではありますが。結束しよう、結束しよう、と内に内にベクトルを向けて、なにかの弾みで1つのベクトルが外に飛び出したとき一気にその方向に突き進むアメリカとは(どちらがいいとか悪いとかは置いておいて)大きく違うなぁと思います。

最後に。イギリスの誰だかが言った言葉です。

「僕は君の意見には賛成できない。けれどもし、君のその意見を封じようとする者があるなら、僕は断固としてそいつに立ち向かっていく。」

固い言葉で言うなら「言論の自由」ですが、反対意見にもきちんと存在する権利を与えようとするこの考え方。自分もこうありたいな、と思うことの1つです。

++ イギリスはおいしい 林望 平凡社 1991(1冊目)
++ イギリスは愉快だ 林望 平凡社 1991(2冊目)

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