弁慶、死す

かわいがっていた野良猫・弁慶が死んでしまいました。見つけたときには、うちの敷地の隅っこで、すでに死んでいたのです。

死因はわかりません。けれど、猫は普通、人知れず死に場所を探すといいます。病気や老衰なら、あのように人目につくところで死ぬでしょうか。うちのアパートは周りがぐるり駐車場なので、クルマにはねられた‥のかもしれません。

出がけにちちが気づき、けれど、すぐに穴を掘ってやる時間もなかったので、帰ってきてから埋めてやろうと相談して出かけました。しかし、夕方戻ったときには、すでに弁慶の姿はなく‥。大家さんか、事故の当人が、どこかに埋めてくれたのでしょうか。うちの敷地で死んだのも、もしかしたら、弁慶の意志だったのかもしれない、わたしたちに看取ってほしかったのかもしれない、そう思うと、自分たちの手で埋めてやりたかった気持ちが半分、でもどこかほっとしたような気持ちも半分‥。

エサをあげていたわけではないのです。ペット禁止のアパート暮らしですから、それはできませんでした。わたしたちはただ、テラスでほたるぼっこしている弁慶をいつもそっとしておいてあげただけ。ほかの猫にけんかで負けそうになっていたら、大きな音たてて窓を開け、けんかのじゃまなどしてただけ。

それでも、小柄で毛並みもわるかった弁慶は、猫仲間だけでなく人間にもあまりモテなかったのか、うちの敷地を数少ない安全地帯とでも思っているかのように、よくほたるぼっこをしていたのでした。

わたしたちが弁慶の遺骸を見つけたとき、弁慶はふかふかの落ち葉の山の中にいました。自分でその場所を選んで、そこで息絶えたのだとしたら。なにもしてあげられなかったことが、切ないのです。

1 Response to “弁慶、死す”


  • あの猫ちゃん(だよね)死んじゃったのかあ…。よくエアコンの室外機の上で寝ていた子だよね。

    願わくば、苦しんだり、痛い思いをして死んだのではないように…

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