空がまだ不思議だった日

少し前のことになりますが、入院中、窓から見える空を指さして「ほたるさん、ほら、空だよ。青ーいね」と、話しかけたことがありました。ほたるの部屋の窓から見えるものと言えば、隣りの病棟と、ときおり行き過ぎる鳥や飛行機と、それから空くらいしかなかったのです。

それまで、さして意識したことはなかったのでしょう。ほたるはそのときはじめて「空」というものを認識して、そして、

おびえました。

刻々と変化する、空。大人にはごく身近で親しい存在であるこの空というものも、ああ、こどもにとっては「なにやら見る度に様子の違う、わけのわからない」畏怖の対象なのだと、そのときハッとしました。

こわがってしがみついてくるほたるの、まだ世の中に染まっていない清らかな心を愛しく思い、自然を畏怖することを忘れていた自分自身に反省し。

そうだ、これからは、きれいだなんだと言うだけでなく、わたしも少しだけ、空のことを怖がってみよう、と決意したのでした。

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